"月英の記憶：
才ある者の憂いは、その才ゆえに。
成し遂げる力を持ちながら、
その成すべきを知らぬこと。
されど、真に才ある者は
成すべきを自ら求め、一歩を踏み出す。
「あぁ……空はこんなにも広いのですね」
「これまで、いかに自分の足元だけを
見ていたことか……」
「己の不明に恥じ入るばかりです」
「にの広い空の下であればきっと、
私の努力を認め、求めてくださる方が
どこかにいるはずですよね」
「それに……」
「どんなに離れていても、
この空はあなたに続いている……」
「その、もし、私を必要とする方が
見つからなかったら——」
「いえ、今から弱気ではいけませんね」
「次は、胸を張ってお会いできるよう、
研鎖を積んで参ります」
「その時まで、どうかご無事で」
着穹を見上げる彼女の瞳は、
日の光を映して力強く輝いていた。

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